撮 影 日 記
平成12年5月


平成12年5月29日:棚田に再挑戦(千葉県鴨川市郊外・大山千枚田)
 先月の18日,田に水が引かれたばかりのここを訪ねたが,夕陽の具合が芳しくなく,露出設定にも失敗が多くて,欲求不満が残っていた。今回は苗が程よく伸び,緑と光る水面に畔がアクセントをつけ,棚田特有のフォトジェニックな光景が眼前に展開していた。
 東斜面は棚田の枚数が多く,いくつものポイントで撮れるのだが,日の出前にはここに居ることが出来る地の利のある人向きの場所である。道を隔てて少し下がったところに西斜面の棚田があるが,ここは,耕して天に至るという棚田の展開にはやや欠けている。しかし,夕陽に恵まれれば,申し分ない撮影場所である。
 日が高いうちに東斜面を撮り,保冷袋のお陰でまだ十分に冷たい缶ビ−ルを飲み,コンビニでチンした少し温かみの残っているタコヤキをつまみながら,落陽を待った。
 だが,今日も僥倖から見放された。空はほんのわずかに赤みが差したのみ。棚田が赤く色づことはなく,犬が畔を通っただけの普通の夕方であった。今年の棚田は,これでお終い。

 農業問題の観点からの棚田は,フォトジェニックという言葉だけでは表現し切れない内容を含んでいるが,写真に関しては「後世に残したい原風景」という視点で向き合っていきたい。


平成12年5月20日から21日:残雪の山とヤナギの新緑(長野県上高地)
 所属するクラブの撮影会。新緑にはちょっと早いと予想したが,やはり緑はヤナギの若葉があるだけの上高地だった。それでも,梓川沿いの山の斜面には,芽吹き始めた木々のそれぞれの色の主張があり,彼らは,時々小雨という気象が作り出したゆっくりと立ち昇る煙霧と絶妙に絡み合い,目を楽しませてくれた。
 梓川の植生はケショウヤナギに代表されるが,ここには10種類ほどのヤナギがあるそうである。どのヤナギだか分からないが,私はケショウヤナギを撮った積もりでいる。時折射す陽光にケショウヤナギの樹の頂きが光ると,辺り一面までが暖かな光景になり,フィルム消化もことのほか進んでしまう。
 翌朝は,4時半出発で明神池へ。ひと番いのオシドリがいた。昨日の大正池でもひと番い,田代池でもひと番い,そしてここでも。AIサ−ボで連写。名前は知らないが木の幹を動き回っている小鳥(帰って図鑑でチェックしたが,アオジかもしれない)も連写。300mmでも豆粒ほど大きさ。何を撮りにいったのやら。
 あの状況では我慢が出来ないと,一週間あとに再度の上高地行きを計画したメンバ−がいたが,然もありなんと思える期待が大きく実り少ない上高地であった。


平成12年5月18日:ヤシオツツジ(栃木県霧降高原) 
 霧降高原は,栃木県日光連山の西の端・赤薙(あかなぎ)山南斜面に広がる霧とニッコウキスゲの高原。名前の通り霧の発生しやすいところで,濃い霧のときには,車のボンネットのすぐ前5mくらいの白い中央車線しか見えない。白い闇。ライトもつけずに前方から来る車にすれ違うと,生きた心地がしない。
 ニッコウキスゲの時期の休日には,キスゲ平に上るリフト乗り場には,百人を越すのリフト待ちの人が並ぶ。料金も高いが,私には歩いて上る体力はない。
 ヤシオツツジもここの名物のひとつ。撮る場所がやや限定されていて,六方沢橋位しかない。ところが,なにせ渓谷の上にかかる橋,風が吹き上げており,強風のときは橋自体が常時揺れている。ファインダ−を覗けば,景色は小刻みに動いているのである。
 この日,ヤシオツツジの群生する標高1400m位の斜面では,新緑がやっと芽吹来始めたところで,色の基調はまだ春とはいえない。橋から見下ろす斜面は緑が豊かでここは撮っておきたい。淡い紫色のヤシオツツジが緑に負けないように,画面作りに苦労した。
 

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