撮 影 日 記
平成13年4月


平成13年4月7日:東京都・新宿御苑
 新宿御苑は皇室の庭園であったが,第二次大戦のあと国民公園となった。いまは環境省の所管である。広大な敷地には50種1500本の桜があり,4月末まで次々に主役交代をしながら咲く桜を楽しむことができる。蛇足ながら,「国民公園」というものの存在を,この日手に入れたパンフではじめて知った。入場料200円で一つ物知りになった。
 ここの桜を撮るには,被写体をどう決めるかの観点から典型化していえば,三つの方法がある。
 人でごった返す公園であるから,人物を主体にしたスナップが第一の方法。被写体は選り取り見取りである。人物の表情を捕まえるのには,桜の名所に来たという気持ちは全く捨て去ったほうがよいだろう。桜の下のファミリ−や二人連れ等が狙いなら別だが,花に負けない被写体を探すのは難しいから。
 第二は,公園を取り囲んで林立する高層ビルを背景にした風景写真。公園の広がり,桜の賑やかさ,ビルに象徴される都会性,カラフルな沢山の人達・・・・,これらを一網打尽にした風景写真である。この日の空は薄日がそそぐ春霞のかかった白っぽい空で,雲のアクセントもない。この空も網にかかるが,画面作り次第では気にすることはない。
 第三は,ただひたすら桜だけを撮る方法。広角なら桜にくっ付き,望遠ならグッと引いて,桜のほかは見向きもしない。人がファインダ−に入れば,我慢強く消えるまで待つか,或いはその場面はあきらめる。桜の頂きを入れて樹形を撮ろうとするとき,白い空が目立つなら,この樹形もあきらめる。第三のものは,あえて桜の名所に行かなくとも撮れる方法で,近所の団地内公園の一本の桜をお目当てにサンダルつっかけて出かけても同じ結果を得ることが出来るのであるが,団地内では2〜3カット止まりが,ここではフィルム無限本数分のシ−ンがあるから,悩ましい。 
 都会の住人としてここにも定着しているカラスを狙う人がいたが,これは撮り方番外編である。
 勿論どの方法を使ってもいいので,やる気満々の人にとっては堪えられない撮影地である。この日の私は,専ら第三の方法でこの日を過ごした。桜・さくら・サクラを撮りたいとの一心がそうさせたのだが,自分で自分に課している‘清濁併せ飲む撮り方’の勉強をする気が,本当にあるのだろうか。
 成果は,「桜百景への憧憬」にアップ(5月27日)。

                 新宿御苑公式サイト
      このリンクで,新宿御苑のご案内を代行させていただく。

平成13年4月22日:山梨方面
       (韮崎市・ワニ塚の桜,韮崎市桃源郷の桃,武川村実相寺の桜)

 やはり山梨は憧れの地である。桜や桃は見事な盛りではなかろうか,南アルプスや八ケ岳は機嫌よく残雪の頂きを見せてくれるだろう,などと考えるだけで,長時間のドライブをやってしまうのである。今日は地図を読むのが実に上手いナビゲ−タの妻がいないので,カ−ナビに案内させる。
 ワニ塚の桜:山梨・北西部の題記の三ヶ所がお目当てである。先ずは韮崎・武田の里にある「ワニ塚の桜」に敬意を表す。これは淡いピンクのエドヒガンの巨木で,ただ一本,田圃の中に立つ。大らかに聳え,枝を四方に張る。美しい姿は誇らしげで,見えを切った歌舞伎役者の華やかさがある。だが,あろうことか,20mほど離れたところに高圧鉄塔が立っているだ。この桜を田圃や畔模様の景色に納める,或いは背景に秩父多摩の山系を配した田園風景のアクセントにする写真を撮ろうとしても,この人工構築物は,オレも写せと画面に入りこんでくる。これを避けるべく,畔道を使わせて頂きあちこちに移動するのだが,満足な構図が得られない。この歌舞伎役者の写真写りの角度は,非常に限定されてしまうのである。つまり,高圧鉄塔の側で撮るか,もう一つは,桜を画面の片側にぎりぎりに寄せて,この鉄塔を画面から追い出す撮り方である。鉄塔(高圧線)の存在は,春特有の白い空と相俟って私の写真力(?)の限界を教えてくれ,畔を歩き回った疲れもあり,少し不機嫌のままここを離れた。
 「あろうことか」と書いたが,むしろ「当然のことに」とすべきだったか。日本の里は,写真撮影には苦しいところが多くなった。
 韮崎市桃源郷の桃:まだ早過ぎた。花の手入れをしている農家の方が付けっぱなしにしている携帯ラジオから,賑やかなお喋りや音楽が流れてくるのを聞きながら,1時間ほど桃畑を歩き廻ったが,結構名の知れた広いこの場所でカメラマンに出会ったのはただの一人。まだ早い,ということを皆さんよく知っているんだなと,落ち込んだ気分で4〜5枚撮る。車から見た限りでは,甲府の盆地の桃は満開のようであったが,そういえば,ここは盆地より2〜300メ−トル高度が高いのだ。
 武川村実相寺の桜:桜は何もいうことなしの咲き具合である。「山高の神代桜」という名で知られている樹齢2000年のエドヒガンザクラは,老化した幹に咲く花とは思えない艶やかで咲き誇る。花の活気に圧倒され,花に命を吹きこむ老木(写真*)の健気さに胸を衝かれる。満開の花が風に揺られ,私のイメ−ジは,スロ−シャッタ−で撮った白い波のようなブレの写真に行きつくのだが,頭の中で楽しんだだけで,しっかりと花びらを捉えたありきたりの写真を少し撮っただけであった。
 実相寺近くに「真原(さねはら)桜並木」というところがある。200本の桜が750メ−トルにわたって道路の両側に並ぶというから,咲けば花のトンネルである。ここはまだ,二,三分の咲きであった。来年の楽しみが出来た。
    *右側の黒い幹の中程から左にはみ出した黒い部分は,
     その高さで無くなっている主幹を覆った小さい屋根である。
          

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