撮 影 日 記
平成14年10月
 その1


平成14年10月9日〜11日:信州,富山・黒部方面
 昨年は時期を逸した信州詣でであった。今年は出発を6日早めたが,栂池の紅葉情報はとうに知っており,遅いと分かっていながら,今年も嬉々として出かけた。信州に行くのだから,行き掛けの駄賃は稼げる筈である。
9日:長野道・豊科を下り,いつもの道を進んで小谷村に直行。空にはかなり分厚い雲と青空が点在し,車は,日向と陰のまだら模様の中を走る。北上する国道148号では雨の心配はないのだが,どういう天候なのか定めがたい,怪しい気配がある。目指す雨飾山の方向の山地は,白い雲の中である。霧中の紅葉が撮れるかもしれないと,イメージを膨らませながら山道に入った。ところが,小谷温泉を過ぎた辺りから小雨となった。下から見上げた白い雲の中は雨だったのである。駐車場の車の中で弁当を使う間に,小雨から本降りになる。タオルで覆ったカメラを首にかけ,レンズ2本・フード2個・予備のタオルをジャンバーのポケットに押し込み,三脚を抱え傘を差して,ヨロヨロと鎌池に向かった。池の周りの散策道は,すでにぬかるみ状態。これをみると,今しがた降り出したという状況ではない。私たちは雨の中に突入したのである。30mほどの向こう岸は,真っ白い霧の闇(写真・背景の上半分が向こう岸)。岸辺のブナの大幹が霞むシルエットとなっている。200〜300mほど進んでところで引き返した。
 辺りを見渡せば,紅葉には若干早かったようだ。写真も2,3枚しか撮らない。そのことは残念ではない。ここまで来て,2年続きで,雨の雨飾となったことに,言いようのない無常を覚えるのである。
 小谷温泉を下り過ぎると,薄日の射す穏やかな秋の日であった。
 ・・・・・・書いていて気が付いた。地名の性なのだ。
10日:始発のロープウエイで栂池自然園へ。今日はいい天気のようだ。小蓮華の山腹を望む高さまでリフトに揺られて登っきて眼にした山腹の景色は,それまで眼下に眺めていた鮮やかな紅葉の森のそれとは,あまりにも違っていた。ダケカンバの黄色が支配しナナカマドの赤が点描されたように色を織り成すここ特有の紅葉の光景は,もうない。そこにあるのは,下生えや針葉樹(栂?)の緑と岩肌と,そして葉をあらかた落として骸骨の様相を呈し始めたダケカンバの白い幹の群れとが眼前を圧する,寂寥の光景であった。私の審美眼では,色彩の面でも構図作りの面でも,フォトジェニックとはいえない。中景や遠景に骸骨化したダケカンバを取り入れた時,シャキッとした画面にならないし,熊笹の緑や残りナナカマドの赤,茶色の岩との取り合わせも,好ましい色合いにはならない。
 展望湿原から白馬三山を仰ぐと,いずれの山頂にも雲が張り付いて,三山は,一瞬たりとも頂きを見せることがない。山襞から沸き立ち動き回る秋の雲(写真・上)は,山頂にまとわりつき,しばしそこで遊んでよそに移っていくのだが,以前からへばりついている三山の頂きの雲は,動きながらもそこから離れることがないのである。雲と三山との絡みは,この日一番の‘写真的’な光景であった。頂きは見えてもよし,見えなくともよし。そんな気持ちで一時間余白馬三山を眺めていた。
11日:昨晩泊まったホテルでは,テレビ・アンテナに落雷があって,全室テレビが映らないとのこと。早く眠るに限ると,夕食に相当に聞し召したが,眠れない。道路地図を眺めていたら,黒部が意外に近い。ここは大町だから黒部が近いのは当たり前だが,この地名は今回の信州詣ででは頭になく,いつもの乗鞍高原に向かう積もりだったのである。急遽予定を変更して黒部に向かった。
 黒部ダム・黒部平周辺,大観望から眼下の山腹は,まさに盛秋である。紅葉する木々が演出する秋の色は,すべてここにあるのではないか思われるほど,賑やかな秋景色である。茶色の岩肌に輝く立山連峰をこのように近くで仰ぎ見るのも初めてある。山の名前が一向に分からないので,なにやらの腕章を付けた方を独り占めにして,山の名前を教わり,展望台の案内看板を何枚も撮った。遠くに白馬・唐松・五竜を望めるのが,嬉しい。青空の下の立山連峰と山腹の紅葉で構図を作ると,もう,これ以上はない位の見事な絵葉書写真(写真・上)になり,内心,ウッシッシ!といういい気分になる。
 それにしても,何という人出の多さ,乗り物代金の高さ。乗り物は,殆どが一時間待ち。整理番号のメモを渡され,まじかにアナウンスがあるので,遠くに行かなければ,乗り損なうことはない。
おかげで,比較的ゆっくりと赤・黄・茶・その他の秋満艦飾の写真を量産した。行き掛け駄賃は,富山県・黒部だった。
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