撮 影 日 記
平成15年2月


平成15年2月25日:千葉県四街道市の「どろんこ祭り
 
この祭りは,四街道市和良比(わらび)の皇産霊(みむすび)神社で,毎年2月25日に開催される。江戸時代末期から行われているといわれ,「和良比はだか祭り」が本名のようだが,もっぱら,「四街道のどろんこ祭り」の名で知られる。
 この神社の氏子であるふんどし姿の男たちが着飾った赤ん坊を抱いて泥田に入り,泥を顔に塗ることで,赤ん坊の健やかな成長と,五穀豊饒男の腕の中で眠ってしまった子を祈願するという祭りである。以前は神社の下に広がる水田(谷津田)の一角が,神社と並ぶ主舞台であったが,田圃を埋めて宅地化が進み,住宅地内の児童公園の隅を耕して水を張って作った泥田が使用されている
    
 この祭りを撮ろうと集まる写真愛好家の大半は,最大の祭事である泥田の中の騎馬戦がお目当てであるが,私は,皇産霊(みむすび)神社社殿の前の光景のほうが好きで,ほとんどの時間をここで過ごす。

 ふんどし姿の男たちが,赤ん坊を抱いてお払いを受けるために集まる,あるいは泥田から帰ってくる,それらの様子がとてもフォトジェニックであるし,騎馬戦で泥だらけになった男たちが,燃え盛る焚き火で暖をとりながら,冷酒やビールをあおる姿が,なお一層フォトジェニックだからである。男たちが緊張気味(寒さのせいかも?)に赤ん坊を抱くのも,祝福の泥を顔に付けられた赤ん坊の泣き顔も,皆同様の光景である。
 
 ところで,私も撮りながら大いに楽しむのだが,‘土地の小さなお祭り’の撮影となると,いつもちょっと感じることがある。それは,写真を撮るためにここに居る私たちだけが,この祭りへの参加者ではなく,見に来た者であるということである。集まった人々は,祝福される赤ん焚き火に当たる坊の両親や家族・親戚,並んだ屋台に群がる近所の子供たち等であり,言ってみれば,名前や顔がある人ばかりであるが,私たちカメラを抱えているのは,写真を撮るという形で祭りを見る匿名の者である。参加している人たちと私たちとは,笑顔が違う,真剣な顔が違う,どよめきなどの感情の表現が違う。
 私は,この賑わいから,始終一歩身を引いて写真を撮るしかないし,写真を撮らせてくださいとお願いしたとき(上の赤ん坊の写真)も,祭りに入り込んだことにはならないのである。そのことが,祭りにまつわる状況をフォトジェニックな視点で見てしまうことになるのだろう。参加者の熱気や感動や赤ん坊が泣いていないかといった親の心配などが,どうも写真に入り込んでこないのである。
 それでも殆ど毎年ここに通うのは,何故だろう。家から歩いて15分程度の皇産霊(みむすび)神社であるから,私にも参加者の気分が少しは出来てきたのかもしれないなどと,自己分析している。

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